YCAM Portal Site

YCAM Re-Marks

Desire of Codes|欲望のコード

三上晴子

知覚の未来を想起する―
情報化社会と身体の関係から生まれる新たな次元の欲望

1980年代から「情報社会と身体」をテーマとした先駆的な活動を展開し、90年代以降にはテクノロジーと芸術表現を批評的に検証した作品群で、国内外から多くの注目を集めてきた三上晴子。本展では「監視社会と身体」をテーマに、3つの構成からなる大規模なインスタレーションを発表した。
監視技術があらゆる面で劇的に発展し、公共空間にもネット空間にもユビキタスな広がりを見せる中で、管理される不自由性と自由な発展性という両義的な要素が、相反して顕在化する今日の社会。その中で生み出される、新たな身体性と欲望の所在について探求したこの作品を通じて、情報技術の進展に伴い拡張を続けるデータベースとの多様な次元でのインタラクションが生み出す時間/空間の在り方やその変容を直接的に提示した。
日時
2010年3月20日〜6月6日
会場
スタジオA
特設サイト
http://doc.ycam.jp/

作品

Desire of Codes|欲望のコード (YCAM委嘱作品/世界初公開)

三上晴子

多視点+多眼のシステムが生み出す欲望

»

Desire of Codes|欲望のコード (YCAM委嘱作品/世界初公開)

三上晴子

多視点+多眼のシステムが生み出す欲望

3つの構成で展開する大規模なインタラクティブインスタレーション。
巨大な壁面を覆い尽くす昆虫の触毛を思わせる大量のストラクチャー(「蠢く壁面」)と、会場中央の天井から吊られた6基のサーチアーム(「多視点を持った触覚的サーチアーム」)は、昆虫がうごめくように、観客を追尾し、監視している。また、会場の奥には、昆虫の複眼のような巨大な円形スクリーン(「巡視する複眼スクリーン」)が設置されており、ここにはストラクチャーに取り付けられたビデオカメラの映像や、世界各地の公共空間にある監視カメラの映像などによって構築されるデータベース「欲望のコード」から映像が、複雑に交錯しながら投影されている。さらに、会場のいくつかのポイントには超指向性マイクが設置されており、インスタレーション空間内で発生する話し声や物音、作品の機械音を収集。3つの構成の状態をもとに、現時点までに蓄積された過去の音声を呼び戻し、それを素材として、常に新たな音響空間を生成している。
このようにして時間や空間を断片的に組み変えながら、新たな現実を描き出すスクリーンの映像やインスタレーション全体の音響空間は、観客自身を監視と表現の対象として、そこにある私たちの今日的な身体性と欲望の所在を問いかけている。

蠢く壁面
壁面を埋め尽くす横15個×縦6列、計90個のストラクチャー。観客が壁面に近づくと、ストラクチャーは先端を明滅させながら、昆虫の触毛のように観客の方向に一斉に動き出す。このとき、個々のストラクチャーから発生する「カシャ」という駆動音によって、生物がざわめくような空間が作り出される。
また、一部のストラクチャーには、人間の知覚を越える高精度の超小型ビデオカメラが取り付けられており、撮影した観客の映像は、ストラクチャーの動作のデータとともに、本作全体の振る舞いを統御するデータベース「欲望のコード」へと取り込まれ、対面に位置する「巡視する複眼スクリーン」に反映される。

多視点を持った触覚的サーチアーム
天井から吊り下がる昆虫の触角のような6基のサーチアーム。その先端にはビデオカメラとプロジェクターが取り付けられており、観客が近づくとこれを感知し、観客の動きに俊敏に追随しながら、観客の撮影と、撮影した映像のプロジェクションをおこなう。インプット(撮影)/アウトプット(投影)を無限に繰り返しながら、フィードバックループを発生させるサーチアームを通じて、観客は「現在」は「ヴォイド/空虚」の繰り返しであるということを認識するようになる。
また、サーチアームの動作は、本作全体の振る舞いを統御するデータベース「欲望のコード」へと取り込まれ、インスタレーション空間内の音響、照明に反映される。

巡視する複眼スクリーン
ストラクチャーが撮影した会場のリアルタイムの映像(観客の皮膚、眼、髪、鞄......)、その5秒前/5時間前/5日前の映像、そして、インターネット上で公開されている世界中の監視カメラの映像(飛行場、公園、廊下、雑踏......)などによって構築されるデータベース「欲望のコード」。昆虫の複眼のような巨大な円形スクリーンは、61個の六角形状のセル(個眼)によって構成されており、ひとつひとつのセルにはこの「欲望のコード」からの映像が、分断されながら、混在している。このスクリーンに映し出される映像の変容や時間軸のずれを通じて、観客は分断された夢や、脳内の記憶を見ているかのような錯覚に陥るとともに、監視によって自動的に生成される欲望の存在を発見することができる。
巡回情報
  • 2014年5月17日〜8月3日 Wonder of Fantasy: The Transformation of Contemporary Image-scape
    会場: 国立台湾美術館(台湾)

  • 2013年7月5日〜9月8日 Artist as Catalyst
    会場: La Alhóndiga Cultural Centre(スペイン)

  • 2013年2月13日〜27日 第16回文化庁メディア芸術祭受賞作品展
    会場: 国立新美術館(東京)

  • 2012年8月30日〜9月30日 Ars Electronica 2012
    会場: Lentos Art Museum(オーストリア)

  • 2011年10月22日〜12月18日 会場: NTTインターコミュニケーション・センター[ICC](東京)

  • 2010年8月6日〜9月19日 SPACE INVENTIONS
    会場: Vienna Künstlerhaus (Austria)

  • 2010年7月31日〜9月5日 TRUST
    会場: Dortmunder U(ドイツ)

クレジット
プログラミング(壁):市川創太
プログラミング(複眼映像):平川紀道
ハードウェア設計(壁):竹ヶ原設計
開発/制作(サーチアーム):クワクボリョウタ

イベント

アーティストトーク

2010年3月21日

»

アーティストトーク

三上晴子と池上高志がそれぞれの作品の背景や制作プロセスについて解説するトークイベントを開催した。このトークを通じて、双方の「リアルタイム性」や「インタラクション」といったトピックに対する視点の共通点と差異が明らかになり、本展のテーマである「監視社会と身体」といったテーマが持つ多重性、拡張性が示唆された。
全文を読む
日時
2010年3月21日
会場
ホワイエ
クレジット
ゲスト:三上晴子池上高志
モデレーター:阿部一直(YCAM)

サウンドライブ「fmtm」

2010年3月20日

»

サウンドライブ「fmtm」

池上高志の作品『MTM[Mind Time Machine]』に音響制作で参加している渋谷慶一郎とevalaによるサウンドライブを開催した。同時期に中庭で展示されていた2人の作品『for maria installation version』のプログラムをもとに、MTMとホワイエ全体を使った、5.1ch+αの音響空間が展開された。
日時
2010年3月20日
会場
ホワイエ
クレジット
出演:渋谷慶一郎evala

プロフィール

YCAM InterLab開発内容

サーチアームの設計と開発

Desire of Codes|欲望のコード

»

サーチアームの設計と開発

Desire of Codes|欲望のコード

サーチアームを制御するための回路設計とソフトウェア開発をクワクボが担当し、回路とセンサーの通信プロトコル、駆動機構の設計と開発をYCAM InterLabが担当した。

駆動機構の設計にあたっては、ステッピングモーターとシリンダーサーボを組み合わせ、ビデオカメラとプロジェクターの天地が反転しないようにしている。また、その動作速度を高速かつ正確にするため、工業用ロボットなどに用いられるトルクの高いモーターを採用した。

サウンド生成システムの構築

Desire of Codes|欲望のコード

»

サウンド生成システムの構築

Desire of Codes|欲望のコード

観客の声や物音、ストラクチャーやサーチアームの機械音といった空間内の音を、会場に設置した超指向性マイクを用いて常時収集し、音圧や周波数成分などの情報とともにデータベースに格納するシステムを構築。さらに、データベースのソースを素材とし、作品のサウンドを加工・生成するソフトウェアを開発した。このソフトウェアでは、作品の各構成の反応/静止の状態、観客の出す声や物音を検索条件とし、データベースから過去の音声ファイルを引き出して使用する。この一連のシステムによって生成されたサウンドの再生には、8個のラウドスピーカーと4個のサブウーファーを使用。空間全体を包み込み、浮遊感をもたらす音響となるよう、スピーカーをレイアウトし、厳密なチューニングを施した。

映像/音響/照明のインタラクションシステムの構築

Desire of Codes|欲望のコード

»

映像/音響/照明のインタラクションシステムの構築

Desire of Codes|欲望のコード

観客と作品との関係から生成されるインタラクションのほか、作品の各構成が相互に連動する高次のインタラクションを実現するシステムを構築した。

このシステムでは、作品内の映像/音響/照明のパラメータやトリガーとして、「蠢く壁面」における15列のストラクチャーのそれぞれの角度とセンサーの数値データ、「多視点を持った触覚的サーチアーム」におけるシリンダーサーボによる垂直方向角度とステップモータによる水平方向角度の数値データ、「巡視する複眼スクリーン」における61個のセル(単眼)に表示される映像ソースの種類別割合の数値データを常時取得している。これにより、「巡視する複眼スクリーン」の自律的な更新、サウンド生成システムにおける発音のタイミングや、音像移動などのエフェクトの決定、サーチアームやストラクチャーを照らす照明システムのタイミングの決定が実行される。

クレジット

主催:

  • 財団法人山口市文化振興財団

後援:

  • 山口市
  • 山口市教育委員会

助成:

  • 財団法人朝日新聞文化財団

協賛:

  • 株式会社アド・サイエンス
  • Microvision, Inc.

協力:

  • 多摩美術大学美術学部情報デザイン学科情報芸術コース
  • 東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系池上高志研究室
  • ATAK
  • 株式会社DGN
  • 合同会社パーフェクトロン

共同開発:

  • YCAM InterLab

企画制作:

  • 山口情報芸術センター[YCAM]
このページのTOPへ