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YCAM Re-Marks

CLOUD FOREST

中谷芙二子+高谷史郎

アートとしての環境圏―
霧・光・サウンドがもたらす、環境創造への新たな展望

1960年代から「霧の彫刻」で知られるメディアアートの先駆的存在の中谷芙二子と、ダムタイプのビジュアルワーク全般を手がける高谷史郎。本展では、芸術表現と情報技術の融合がもたらす〈新たな環境創造〉をテーマに、2人のコラボレーションによる大規模なインスタレーションをYCAM内外の公共空間3ヶ所で発表した。
情報技術を駆使して人工霧やサウンドを緻密に構成し、つくり上げられたインスタレーション群は、生成/浸透/反射を繰り返しながら、見えるものと見えないもの、そして自然環境と人工環境の対話を促し、「環境」をエコロジーの視点だけでなく、自然環境、社会環境、精神環境、そして今日的な情報環境が相互にインターフェースする視点から捉えることで立ち上がる相互浸透性を、新たな「環境圏」として提示した。
日時
2010年8月7日〜10月17日
会場
ホワイエ、中庭、中央公園
特設サイト
http://cloudforest.ycam.jp/
ポスター、フライヤーなど

作品

CLOUD FOREST - PatioA, PatioB (YCAM委嘱作品/世界初公開)

中谷芙二子+高谷史郎

霧、光線、サウンドが表現する、インターフェースとしての「環境」

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CLOUD FOREST - PatioA, PatioB (YCAM委嘱作品/世界初公開)

中谷芙二子+高谷史郎

霧、光線、サウンドが表現する、インターフェースとしての「環境」

霧とサウンドが組み合わされた大規模なインスタレーション。
作品空間の内部では、さまざまな方向から人工霧がタイミングを変えて放出されており、作品空間の内部は館内外の環境に左右されながら、常に異なる情景へと移り変わっていく。また、作品空間内には超指向性スピーカーを用いた特殊な音響システムが構築されているため、観客は、日常では見ることのできない霧や光の細かな動きを発見しながら、サウンドスケープを体験していく。
ガラス壁に囲まれながらも、日光や雨、風が侵入してくるという、外部(自然環境)と内部(人工環境)が共存する中庭の特徴を活かし、それらが相互に影響し合うことで生成される新たな空間体験を実現している。また2つの中庭は、それぞれ空間の形状や大きさが微妙に異なっており、それに合わせて、人工霧発生装置や音響システムのレイアウトや、制御アルゴリズムを変えているため、それぞれ全く違った表情を見せる。
観客はこの作品の内部では一種の「環境内存在」となって、霧に包まれた中庭を歩きながら、外部と内部、自然と人工とを共有するインターフェースとしての「環境」のあり方を発見することができる。
クレジット
サウンドデザイン:南 琢也(softpad
プログラミング:古舘 健
DMX制御基盤設計:クワクボリョウタ
レコーディング協力:吹田哲二郎

CLOUD FOREST - Foyer (YCAM委嘱作品/世界初公開)

中谷芙二子+高谷史郎

音と光が交錯する、大規模で濃密なサウンドスケープ

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CLOUD FOREST - Foyer (YCAM委嘱作品/世界初公開)

中谷芙二子+高谷史郎

音と光が交錯する、大規模で濃密なサウンドスケープ

音と光の反射に着目したサウンド・インスタレーション。
1974年にE.A.T.の中谷芙二子やディヴィッド・チュードアが構想したプロジェクト「島の目、島の耳(Island Eye Island Ear)」をもとに、全く新しいサウンドスケープがつくりだされている。
約10m四方の床面はすべて鏡張りとなっており、そこに9基のポール状の超指向性スピーカーが3列×3列のグリッド状に設置されている。そして、それぞれが自律的に回転しながら、「音のビーム」を空間内に発生させる。このスピーカーの音源には、山口をはじめとする様々な場所で収録された環境音や、館内の別の場所でリアルタイムに採取されたノイズ音などが用いられており、これらが緻密に構成されたうえで再生されている。
発生した音のビームは、周囲の壁面に当たり、反射することで、「音の面」とでも言うべき複雑なサウンドスケープを空間内に立ち上げており、観客は局所的に発生しては移行/消滅していくサウンドを知覚しながら、外部の自然環境までを取り込んだ音と光の壮大な空間を体感することができる。
クレジット
サウンドデザイン:南 琢也(softpad
プログラミング:古舘 健
DMX制御基盤設計:クワクボリョウタ
レコーディング協力:吹田哲二郎

CLOUD FOREST - Fog Installation #47784 (YCAM委嘱作品/世界初公開)

中谷芙二子+高谷史郎

環境と融合し、流動するオブジェ=「霧の彫刻」

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CLOUD FOREST - Fog Installation #47784 (YCAM委嘱作品/世界初公開)

中谷芙二子+高谷史郎

環境と融合し、流動するオブジェ=「霧の彫刻」

人工霧を用いた大規模なインスタレーション。
1970年の大阪万博ペプシ館で初めて発表されて以降、40年間に渡って世界各地で注目を集めてきた中谷芙二子の代表作「霧の彫刻」を、広大な公共空間である中央公園に展開する。風の状態に応じて人工霧を放出する方向や量を制御する独自のシステムと、高谷史郎が今回のために新規に構造設計を手がけた人工霧発生装置によって、移ろいやすい自然の霧と、造形された人工の霧の双方が共存する独特の空間を実現している。観客は圧倒的な霧の量感を感じながら、環境と融合し、流動するオブジェとしての霧を体感することができる。

イベント

デモンストレーティブ・パフォーマンス

2010年8月7日

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デモンストレーティブ・パフォーマンス

展覧会のオープニングを記念して、本展のアーティストである高谷史郎と、本展でサウンドデザインを担当したsoftpad、同じく本展でプログラミングを担当した古館健によるライブパフォーマンスを開催した。このライブパフォーマンスは、展示作品『CLOUD FOREST- Patio A, Patio B』と『CLOUD FOREST - Foyer』を使用しておこなわれ、観客は自由に作品空間の内部に入りながら、思い思いの場所で霧、光、音が織りなす空間の変容を体感した。
日時
2010年8月7日
会場
ホワイエ
クレジット
出演:softpad(南琢也、上芝智裕、外山央)、古館健

アーティストトーク

2010年8月8日

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アーティストトーク

批評家の浅田彰をモデレーターに、建築家の磯崎新をスペシャルゲストに迎え、中谷芙二子と高谷史郎が作品の背景や制作プロセスについて解説するトークイベントを開催した。トークイベントでは、本展の発想の源となった1970年の大阪万博ペプシ館における実験グループE.A.T.の取り組みも参照しつつ、そこで初めて発表された中谷の「霧の彫刻」、ディヴィッド・チュードアのサウンドスケープなど、先駆的な業績についても振り返った。
日時
2010年8月8日
会場
スタジオB
クレジット
ゲスト:中谷芙二子高谷史郎磯崎 新
モデレーター:浅田 彰

関連上映

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関連上映



  • 中谷芙二子『FOG OVER KNAVELSKÄR』(『Island Eye Island Ear』ドキュメント/スウェーデン、1974年)
  • 中谷芙二子+トリシャ・ブラウン・ダンス・カンパニー『霧の彫刻 #72503「Opal Loop」』(アメリカ、1980年)
  • 中谷芙二子『霧の彫刻 #94925「砂漠の霧微気象圏=エコスフィア」』(オーストラリア国立美術館彫刻の庭、オーストラリア、1982年)
  • 中谷芙二子『霧の森』(国営昭和記念公園子供の森、1992年)
  • 中谷芙二子『霧の庭「グリーンランド氷河の原」』(中谷宇吉郎雪の科学館、1994年)
  • 中谷芙二子『霧の彫刻 #80250「F.O.G.」』(グッゲンハイム美術館収蔵作品、1999年)
  • 中谷芙二子『霧の彫刻 #48687「Noontide」』(第2回シンガポール・ビエンナーレ、シンガポール、2008年)
  • 中谷芙二子『Fogfalls #47670「雨月物語―懸崖の滝」』(第3回横浜トリエンナーレ、2008年)
  • 中谷芙二子+doubleNegatives Architecture『MU : Mercurial Unfolding 偶成と展開』(東京日仏学院、2009年)
  • 高谷史郎『frost frames』(リヨン現代美術館、フランス、2000年)
  • 高谷史郎『optical flat』(国立国際美術館収蔵作品、2000年)
  • 中谷芙二子+高谷史郎『IRIS』(バレンシア・ビエンナーレ、スペイン、2001年)
  • 坂本龍一+高谷史郎『LIFE - fluid, invisible, inaudible...』(山口情報芸術センター、2007年)
  • 高谷史郎『La Chambre Claire(明るい部屋)』(Grec Festival、スペイン、2010年)
  • E.A.T.『Pavilion』(編集:パーブロ・シュルツ)
  • E.A.T.『Pepsi Pavilion』(スライドショー/大阪万国博覧会、1970年)
  • E.A.T.『Island Eye Island Ear』(スライドショー/スウェーデン、1974年)

プロフィール

YCAM InterLab開発内容

インフラ設計

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インフラ設計

高圧電源を要する霧発生装置を、館内中庭と中央公園で同時に稼働するため、AC200V三相三線の動力電気工事を実施。また、霧発生装置への水の供給を確保するため、昇圧ポンプを含めた水道供給システムの設計をおこなった。これにより、7〜155気圧に昇圧された水を、毎分100リットル、15分間継続して放出することが可能になった。このほか、センサーで取得した周辺環境の風向や風速のデータをもとに、霧発生装置と音響装置を制御するシステムを構築。中庭にレイアウトした計456個のノズルをもつ霧発生装置と、中央公園にレイアウトした計360個のノズルをもつ霧発生装置の動作タイミングと霧の放出量を制御するほか、ホワイエに設置した音響装置の回転コントロールを可能にした。システムの設計にあたっては、通信プロトコル「DMX」を採用し、センサーのアナログ信号をDMXに変換する回路、DMXで受信した信号をもとにハードウェアを駆動させる回路を開発した。

ミラー装置の開発

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ミラー装置の開発

太陽の運行を追尾し、太陽光を中庭の内部へと反射させるミラー装置を開発した。展示会場となる中庭は半屋外であるため、ハードウェアには防水加工を施し、ステンレスやアルミを素材としたパーツで設計をおこなった。また、日々変わっていく太陽の運行と、中庭との位置関係を算出するプログラムを開発し、的確に中庭に太陽光を反射させるようにした。

噴霧制御ソフトウェアの開発

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噴霧制御ソフトウェアの開発

風向や風速のデータをもとに、中谷氏が考案した噴霧パターンを切り替えるソフトウェアを開発した。

中央公園と中庭において人工霧が充満/消散するシーンをつくりだすため、噴霧パターンに最適なノズルユニットとの組み合わせや、噴霧時間を、それぞれの空間にあわせて厳密にデザインした。また、使用する噴霧シーケンスの選択と再生のタイミングは、中央公園に設置したセンサーの風向と風速のデータに基づき、3つの会場の霧の充満状態を判断し、決定するよう制御している。

サウンド生成ソフトウェアの開発

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サウンド生成ソフトウェアの開発

人工霧の放出が止まり、消散していく間に再生されるサウンドを生成するソフトウェアを開発した。サウンドは、予め収録された人間のささやき声のサウンドファイルを断片化し、再構成している。また、鑑賞者が、人工霧に包まれた中庭を歩く中で、不意に音と出会うよう、それぞれの中庭に6個の超指向性スピーカーをレイアウトし、配置した。

超指向性スピーカーを内蔵した音響装置の開発と、制御ソフトウェアの開発

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超指向性スピーカーを内蔵した音響装置の開発と、制御ソフトウェアの開発

「CLOUD FOREST - Foyer」が設置されるホワイエ周辺の壁や階段などに「音のビーム」を照射することで、反射音からなる複雑なサウンドスケープを立ち上げる、という高谷史郎の構想に基づいて、超指向性スピーカーを内蔵した9基の音響装置を設計/開発した。

音を任意の方向へ正確に照射するよう、水平方向の無限回転を実現。精密なステッピングモーターを組み込むことで、0.005度単位での制御を可能にした。さらに、この音響装置の動きや、この装置から再生されるサウンドをコントロールするソフトウェアを古舘健と共同開発した。このソフトウェアでは、セルオートマトンを参考にしたアルゴリズムによって、装置の回転スピードや方向を決定するとともに、再生するサウンドを、30を超えるシーケンスの中から決定する。これらのシーケンスは、野外で収録した音、館内の物音、霧発生装置の動作音、装置の回転速度から生成したパルス音などを素材とし、南琢也のサウンドデザインを経て制作された。再生するシーケンスは、回転する複数の装置が向かいあった瞬間や、全ての装置が同じ方向を向いた瞬間といった、9基の装置の複合的な動作状態や、両脇にある「CLOUD FOREST - Patio A, Patio B」の霧の発生タイミングに基づき決定される。

クレジット

主催:

  • 財団法人山口市文化振興財団

後援:

  • 山口市
  • 山口市教育委員会

山口開府650年・湯田温泉復活300年記念事業

助成:

  • 財団法人朝日新聞文化財団

平成22年度文化庁芸術拠点形成事業

特別協力:

  • Experiments in Art and Technology

協力:

  • 株式会社プロセスアート
  • 有限会社ダムタイプオフィス

共同開発:

  • YCAM InterLab

企画制作:

  • 山口情報芸術センター[YCAM]
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