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YCAM Re-Marks

Radio Solaris / -273,15℃=0 Kelvin

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

メディアとしての〈都市と建築〉
記録と再現の狭間から新たなリアリティを形成する

現在の社会や制度の中で、不可視のまま横たわっている社会的事象の痕跡に目を向け、多様なアプローチでその歴史的な意味を明らかにしてきたニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ。本展では、彼らがこれまでに発表した映像作品などを交えながら、人々の記憶を呼び起こすメディアとしての〈都市と建築〉の可能性を探る新作インスタレーションを発表した。
リアルなものを再現する技術=メディアは、人間や社会にとって、どのような意味を持つのか。そして、人はメディアを介して何を再現しようとしているのか。ベルリンに残る旧東ドイツ時代のラジオ局の建物とタルコフスキーの映画『惑星ソラリス』をモチーフに、両者を対比させながら壮麗に展開する新作を通じて、20世紀以降の歴史を貫くような問いの数々が投げかけられた。
日時
2005年10月1日〜11月27日
会場
スタジオB
特設サイト
http://radiosolaris.ycam.jp/
ポスター、フライヤーなど

作品

Radio Solaris / -273,15℃=0 Kelvin (YCAM委嘱作品/世界初公開)

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

建築から滲み出る社会とリアル

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Radio Solaris / -273,15℃=0 Kelvin (YCAM委嘱作品/世界初公開)

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

建築から滲み出る社会とリアル

タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」と、旧東ドイツ時代にラジオ局として使用されていた建築物を対比していく映像作品「-273,15℃=0 Kelvin」をベースにしたインスタレーション。
会場には、10面の大型スクリーンが渦巻き状に連続して設置されており、そこに『-273,15℃=0 Kelvin』で使用されているラジオ局内部を捉えた映像や「惑星ソラリス」のワンシーンをモチーフにした映像に加え、この作品のために新たに制作した映像が投影されている。鑑賞者は、現実と記憶、現代と過去、フィクションとノンフィクション、資本主義的リアリティと社会主義的リアリティがないまぜになった幻惑的で優美な映像に飲まれながら、〈何かが冷凍されたように保存された環境〉というラジオ局と惑星ソラリスの間にある奇妙な共通点、そして、そうした環境で何かを再現/補完しようという人々の姿を目の当たりにすることになる。

-273,15℃=0 Kelvin
旧東ドイツ時代に「DDRラジオ放送局」として使用されていた建築物が持つ奇妙な存在感に注目し、その内部を長回しで撮影した映像作品。建築の映像のほか、「惑星ソラリス」に登場するワンシーンをモチーフにした映像や、ゲルハルト・リヒターの絵画作品「1977年10月18日」を想起させる映像がオーバーラップしていく。
タイトルは人間が到達し得ない絶対零度(-273.15℃)を指し示すとともに、「惑星ソラリス」の主人公で、ソラリスの海が持つあらゆる存在を再現する能力を前に苦悩する心理学者ケルヴィン博士のことを示唆している。

DDRラジオ放送局
旧東ドイツ政権下の1956年に、ベルリンのナレパシュトラーセに建設された国営ラジオ局。設計はバウハウス出身の建築家フランツ・エーリッヒが手がけた。当時のあらゆる最先端技術を注ぎ込んで建設されたこの施設では、レコーディング用のホールがノイズを避けるためだけに宙吊りにされているなど、現在でもなお通用する良質な音響空間を誇っている。
なお、本作の渦巻き状にレイアウトされたスクリーンは、このラジオ局内部にある特徴的な録音スタジオの造形に由来している。

本作のために追加したシーン
本作では『惑星ソラリス』に登場する未来都市のシーンと、それを再現した映像を、作品の重要な構成要素として追加している。前者はタルコフスキーが来日した1972年夏に東京で撮影されたもので、首都高速を走行する映像と、東京の街並みを見下ろす映像の2つからなる5分ほどのシーンである。フィッシャー&エル・サニは、それらを細かく分析することで、走行ルートはもちろんのこと、街並みを見下ろした場所が赤坂プリンスホテルのある部屋であることを突き止め、『惑星ソラリス』とほぼ同じ構図の映像を撮影することに成功した。
本作では、この2つの映像を併置することで、フィクションとリアル、過去と現在を鋭く対比させ、両者の差異を浮かび上がらせている。

共和国宮殿 (日本初公開)

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

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共和国宮殿 (日本初公開)

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

旧東ドイツを象徴する建築物のひとつ「共和国宮殿」を捉えた2つの映像からなるインスタレーション。
壁面に隣り合わせに投影される2つの映像。1つは内装が解体され廃墟同然となった宮殿の内部の、かつて議会があった場所をスキャンするようにゆっくりと撮影した映像で、もう1つは宮殿の窓からベルリンの中心部を捉えた映像である。これらの2つの映像を同時に再生することで、急速に変化していく統一後のドイツの中でこの建物だけが、時間が止まってしまったかのような、一種の「宙吊り状態」にあるということを示している。

共和国宮殿
ベルリンの大通り「ウンター・デン・リンデン」沿いに存在していた多目的施設。
1976年に、第二次世界大戦で崩壊したベルリン王宮の跡地に建設され、内部のホールでは旧東ドイツ人民議会のほか、コンサートやテレビ番組の収録などがおこなわれていた。また宮殿にはホールの以外にも、ボウリング場などの娯楽施設や、レストラン、バーも併設しており、市民の間で高い人気を誇る憩いのスポットだった。
しかし、1990年のベルリンの壁崩壊直前に、内装に含まれているアスベストの有毒性から閉鎖が決定。その後、2003年まで内装の除去作業がおこなわれ、いつでも取り壊し可能な状態になった。
東ドイツの象徴として残すべきだと主張する人々と、解体してベルリン王宮を再建するべきだと主張する人々との間で論争があったが、2年間イベント会場として利用された後、2006年に取り壊された。2012年現在、ベルリン王宮の再建に向けた工事がおこなわれている。

パノラマ・ベルリン―アレクサンダー広場のテレビ塔 (日本初公開)

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

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パノラマ・ベルリン―アレクサンダー広場のテレビ塔 (日本初公開)

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

旧東ドイツを象徴する建築物のひとつ「ベルリンテレビ塔」の展望台にあるレストランを捉えた映像によるインスタレーション。
ベルリンテレビ塔の最上階にあるレストランは、フロア全体が水平方向にゆっくりと回転し続けており、訪れた人々は食事を楽しみながらベルリン市街全体を一望することができる。このレストランはオープン以来、1時間で1回の速度で回転していたが、ドイツ統一後は改修により30分に1回の速度にスピードアップした。その背景には、資本主義経済の導入に伴う、営業の高効率化への圧力があったと言われている。
この作品では、レストランが1回転する30分間に渡って、レストランの内部から窓際にいる市民や観光客を撮影。その映像を半分の速度、つまり1時間に引き伸ばすことで、東ドイツ時代の回転速度を再現している。また、映像に映し出される被写体のゆっくりとした動きを通じて、社会全体がスピードアップしてしまった今日の東ドイツの姿を浮き彫りにし、かつての東ドイツに対する一種の郷愁へと誘う。

ベルリンテレビ塔
ベルリンのアレクサンダー広場にあるテレビ塔。現在の高さは368メートル。
1969年、旧東ドイツの建国20周年記念日に完成して以来、ベルリン中の家庭にテレビ放送用電波を発信し続けているとともに、ベルリンを代表するランドマークとして、統一後の現在に至るまで人々に親しまれている。この作品の制作後、レストランフロアの回転速度はさらに上がり、現在では20分に1回の速度で回転している。

TOKYO STAR

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

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TOKYO STAR

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

歌手としてデビューする前の中島美嘉をはじめとする6人の若者たちが、ダンススクールでのトレーニングを積みながら、「ポップスター」や「アイドル」を目指していくその過程を収めたドキュメンタリー映像。

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ映像作品集

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

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ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ映像作品集

ニナ・フィッシャー&マロアン・エル・サニ

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  • 1953年6月17日

プロフィール

クレジット

主催:

  • 財団法人山口市文化振興財団

後援:

  • 大阪ドイツ文化センター
  • 山口市
  • 山口市教育委員会

助成:

  • 財団法人野村国際文化財団

特別協力:

  • Galerie EIGEN + ART Leipzig / Berlin

技術協力:

  • YCAM InterLab

企画制作:

  • 山口情報芸術センター
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